![]() 膵臓癌を処置するための医薬
专利摘要:
本発明は、膵臓癌を処置するための医薬としての、アスパラギナーゼを封入した赤血球の懸濁液に関する。具体的には、膵臓癌の処置を意した治療用組成物又は医薬であって、該赤血球懸濁液を有効量含む治療用組成物又は医薬に関する。 公开号:JP2011507935A 申请号:JP2010540140 申请日:2008-12-24 公开日:2011-03-10 发明作者:ゴドフラン,ヤン;デュフル,エマニュエル−セシル 申请人:エリテシュ ファルマ; IPC主号:A61K38-46
专利说明:
[0001] 本発明は膵臓癌の治療的処置に関する。具体的には、この癌を処置するための新規組成物、及び関連する治療的処置方法に関する。] 背景技術 [0002] 膵臓癌は、フランスでは癌による死因の第6位であり(2000年に7181人が死亡)、先進工業国では癌による死因の第5位、米国では男性の死因の第4位になっている。フランスでは、その発生数は年間100,000人当たり5〜10人であり、この数は毎年少しずつ(1〜2%)増えている。膵臓癌は消化器系の癌の7%を占め、女性(40%)よりも男性(60%)の方が多く疾患する。進行した段階で診断が行われる場合が多いので、半分の症例で転移が検出され、その結果、この癌の平均生存期間は数カ月に過ぎず、5年生存者は4〜6%である。全病期を合わせた場合の生存期間中央値は4〜7カ月であり、切除術を受けた患者では、15〜18カ月延長する。] [0003] 腫瘍が手術不能であるか、又は転移が見られる場合には、全身状態の良い告知患者において化学療法が検討されることがある。その奏功率は約15〜30%である。用いられる医薬はゲムシタビン(Burris et al., European Journal of Cancer, 1997, 33:18-22)、ゲムシタビンとオキサリプラチンとの組み合わせ(Zhao et al., Chinese-German Journal of Clinical Oncology, 2007, 6(5): 461-463)、及び白金誘導体と組み合わせた5−フルオロウラシルである。これらの化学療法によって、転移のある患者の生存期間中央値をわずかに上昇させることができ、無処置の場合にはこの生存期間中央値は4〜6カ月である。] [0004] 新規な化学療法で記録された進歩にもかかわらず、膵臓癌の予後は依然として非常に悪い。治癒目的で手術を行った患者でさえも、局所再発及び転移性再発のせいで、5年生存率は約25%に過ぎない。] [0005] 膵臓癌に付随する重篤性及び非常に悪い予後、並びに、特に西洋諸国の人々におけるその発生数の漸進的増加に直面して、現在提案されている処置方法よりも有効な代替的処置方法を提案する真の必要性が存在する。] [0006] アスパラギナーゼは、細菌性微生物(大腸菌又はエルビニア・クリサンセミ(Erwinia chrysanthemi))から生成される酵素であり、約30年にわたり白血病に対する化学療法で使われてきている。この酵素は、細胞の生存のために必要なタンパクの産生に不可欠なアミノ酸であるアスパラギンを加水分解して枯渇させる。正常細胞とは対照的に、特定の癌性リンパ芽球細胞は、それ自体でアスパラギンを合成する能力を持たず、タンパクの合成を細胞外の供給源に依存している。アスパラギナーゼによる処置によって、癌性リンパ芽球細胞からこの不可欠な構成要素を奪い、その結果、癌性リンパ芽球細胞の死滅をもたらす。この抗有糸分裂剤は腫瘍細胞に対して選択的である。] [0007] しかしながら、天然のアスパラギナーゼは循環抗体の産生を誘発し、アスパラギナーゼのクリアランスの上昇、及びアレルギー反応(非常に重篤な場合もある)を引き起こす(Wang B et al., Leukemia, 2003; 17(8): 1583-1588)。更には、この酵素の短い半減期(24時間)によって、反復注射と入院が必要になる。これらの大きな短所は、ペグ化形態であるPEG−アスパラギナーゼの開発を導き、このPEG−アスパラギナーゼは、急性リンパ芽球性白血病(LAL)の一次処置用としてFDAから承認されている。] [0008] 1980年代、インビトロにおけるアスパラギナーゼのヒト膵臓癌細胞株に対する作用を様々な研究者が研究した。] [0009] アスパラギナーゼのヒト膵臓癌細胞株(MIA Paca−2)に対する作用の最初の証拠は、1977年にYunisらによって説明が行われた(Yunis AA et al., Int J Cancer, 1977; 19(1): 128-35)。MIA Paca2株の存在下でインキュベートしたアスパラギナーゼは、0.1IU/mlの濃度で上記の細胞の増殖に対して有意な作用を及ぼし、0.5及び1IU/mlの濃度で細胞増殖を完全に阻害し、細胞死を招く。] [0010] アスパラギナーゼ(1IU/mlの濃度で使用)は別の膵臓癌細胞株(PANC−1)に対する作用を有するので、上記の作用が膵臓細胞に特異的であることも上記の研究者らは示している。しかし、アスパラギナーゼのヒト肺細胞及びメラノーマ細胞の増殖に対する作用は観察されていない。上記の研究者らは、MIA Paca−2細胞のアスパラギナーゼに対する感受性のメカニズムは特定しなかった。] [0011] 翌年、Wuらの研究によって、MIA Paca−2細胞及びPANC−1細胞におけるこれらの成果が確認された(Wu M. et al., Int J Cancer, 1978 22(6): 728-33)。そのメカニズムは依然として不明であるが、これらの研究者は、アスパラギナーゼの膵臓癌細胞に対する作用がタンパク合成の阻害を介して生じることを示唆した。] [0012] これらの成果は、アシネトバクター・グルタミナーゼ・アスパラギナーゼ(AGA)という別の酵素によっても得られ、この酵素はアスパラギナーゼよりも効果が高かった(WUMC et al., In Vitro, 1982 Sep; 18(9): 750-4)。この研究者は、この酵素が0.0025IU/mlの濃度で(アスパラギナーゼはこの濃度では作用を有さない)MIA Paca−2細胞とPANC−1細胞の細胞増殖を完全に阻害することと、この活性がこの酵素のグルタミナーゼ活性によっても起きることとを示している。] [0013] 1977年には、Lessnerら(LessnerHE, et al., Digestion, 1977, 16(3): 255)が、膵臓癌の処置におけるL−Aspの考え得る役割を明らかにするための臨床試験を発表したが、患者のうちの2人において反応が見られず、副作用が観察されたことを彼らは既に示していた。膵臓癌の処置におけるアスパラギナーゼの効果を試験することを目的とした第二相臨床試験中に得られた結果の発表(Lessner HE, et al. Cancer Treat. Rep., 1980; 64: 1359-1361)を受けて、膵臓癌の処置でアスパラギナーゼを用いることへの関心は突然中断した。手術不能の膵臓癌患者10人に大腸菌アスパラギナーゼを1000IU/kg/日で静脈内注射した。重篤な副作用が即座に現れた。このため、この処置を早期に停止した。したがって、実施された唯一の臨床試験では、アスパラギナーゼには、膵臓癌の症例においては治療上の利点はないと結論付けられた。] [0014] 最近になって、アスパラギナーゼのペグ化形態に関する研究を受け、関心が回復してきている。] [0015] 1999年にAACR会議(AACR Congress)で発表された前臨床試験(Denis LJ et al. Proc Am Assoc Cancer Res, 1999: p.23)において、1IU/mlのPEG−アスパラギナーゼの付加によって、細胞増殖を61%(MIA Paca−2)、100%(PANC−1)阻害するのが可能になり、10IU/mlのPEG−アスパラギナーゼの存在下でインキュベートしたBxPC−3細胞では51%阻害するのが可能になった。MIA Paca−2細胞でのPEG−アスパラギナーゼのIC50は0.13IU/ml、PANC−1細胞では0.25IU/mlである。上記の著者は、MIA Paca−2細胞をヌードマウスに移植することによって、インビボ実験も行った。ゲムシタビン(1日目、4日目、7日目、及び10日目に80mg/kg、腹腔内)と共に、又はゲムシタビンなしに、PEG−アスパラギナーゼを14日間注射することによって(1日当たり12.5IU/g又は25IU/g、腹腔内)、これらのマウスを処置した後、著者は、59%(PEG−アスパラギナーゼのみの場合)、63.5%(ゲムシタビンのみの場合)、及び85.9%(PEG−アスパラギナーゼとゲムシタビンの場合)の細胞増殖の阻害を観察する。] [0016] 2006年のAACR会議(AACR Congress)で、補足的な結果が発表された(Supra P. et al. AACR November 2006)。この研究は、固形腫瘍(膵臓、卵巣、及びリンパ腫)の処置用のPEG−アスパラギナーゼ(Oncaspar(登録商標)、エンゾン・ファーマシューティカルズ)のインビトロ及びインビボでの評価を示している。PEG−アスパラギナーゼのインビトロでの細胞毒性(IC50)は0.27IU/ml(PANC−1)、0.66IU/ml(MIA Paca−2)、0.46IU/ml(PANC 10.05)、及び20IU/ml超(CFPAC−2及びAsPC−1)である。PEG−アスパラギナーゼのインビボでの効果は、マウスに移植したMIA Paca−2細胞(2.5×106個の細胞)の異種移植片上で測定した。つまり、PEG−アスパラギナーゼ(0.8kIU/kg)で1回処置すると、腫瘍体積を14%減少させることが可能になり、ゲムシタビン(80mg/kg)によって29%の減少が可能になり、これらの2つを組み合わせると、48%の減少が可能になる。PEG−アスパラギナーゼ(Oncaspar(登録商標))とゲムシタビン(Gemzar(登録商標))との組み合わせは、固形腫瘍の成長に対する阻害作用を有する。] [0017] アスパラギナーゼは30年よりも長期にわたって使われてきているので、この酵素に付随する望ましくない作用は周知であり、その主たるものは、臨床症状を伴うある種のアレルギー、糖尿病及び膵炎、精神障害、並びに、凝固障害である。] [0018] アスパラギナーゼの投与は、ヒトにおいて過敏性反応を引き起こす。発生のメカニズムは複雑で、現時点では完全には解明されていない。アスパラギナーゼは、その高い分子量(>10,000Da)とタンパク特性ゆえに、直接的な免疫原である。過敏性反応は、IgE依存メカニズム(規範的な意味ではアナフィラキシー)、又は補体の活性化のいずれかに由来する場合がある。多くの患者では、特異抗体の形成に至る。アスパラギナーゼは、アスパラギナーゼのクリアランスの上昇と、その治療効果の低下とによって現れる中和特性を有する特異的な循環IgGの出現を引き起こす(Muller HJ, Boos J., Crit Rev Oncol/hematol 1998; (28): 97-113)。これらの抗体は、3つの形態のアスパラギナーゼ(大腸菌アスパラギナーゼ、エルビニアアスパラギナーゼ、PEG−アスパラギナーゼ)によって観察されているが、PEG形態の免疫原性が最も低いようである。] [0019] 症状には、最も一般的なものとして注射部位における単純な限局性紅斑、又は更には単純な痛みから、喉頭浮腫、気管支痙攣、及び/又は低血圧症があり、例外的に、最も重篤なケースでは、全身性アナフィラキシーショックを起こす(ZubrodCG, Pediatrics, 1970; (45): 555-9)。] [0020] アスパラギナーゼによる免疫アレルギー反応の発生率は不明瞭で、処置した患者の5〜70%である。平均で、小児の4分の1が重篤な反応を示す(Mathe G, Amiel JL, Clarysse A, Recent Results Cancer Res. 1970 (33): 279-87、WooMHet al., Leukemia, 1998 Oct; 12(10): 1527-33、Woo MH, Hak LJ, Storm MC, Sandlund JT, Ribeiro RC, Rivera GK, J Clin Oncol, 2000 Apr; 18(7): 1525-32)。異なる菌株からのアスパラギナーゼの調製、併用療法の利用、又は投与経路(静脈内又は筋肉内)といった様々な要因によって、この変動性を説明することができる。アレルギー反応の頻度は、1サイクルの処置における注射の回数、及び2回の処置間の間隔と共に上昇する(Mathe 1970)。] [0021] 特異抗体又は過敏性反応の発生は、処置中断の一般的原因である(WooMH, Hak LJ, Storm MC, Sandlund JT, Ribeiro RC, Rivera GK, J Clin Oncol, 2000 Apr; 18(7): 1525-32)。特異抗体を産生した患者では、持続期間の短縮によって現れる、アスパラギナーゼの治療効力の低下、並びに/又は、アスパラギナーゼの薬物動態の低下及び変化の発生が観察される。過敏性反応を示した患者では、更に重篤な反応を示す恐れから、予防策として処置が中断される。アレルギー反応を受けて処置が早期に停止されるので、規定の期間中に血漿中のアスパラギンを枯渇させるというアスパラギナーゼの治療目的は達成されない場合が非常に多い。] [0022] 膵臓は、おそらく高レベルのタンパク合成が原因で、アスパラギナーゼの毒性の標的器官の1つとなっている。この毒性は、急性膵炎(最も一般的)又は糖尿病のいずれかの形で現れ得る。] [0023] 急性膵炎の臨床症状は、自然に消散する良性の疾患から、合併症(出血、偽嚢胞)、致命的な劇症疾患までに及ぶが、急性膵炎のメカニズムは不明のところが多い。] [0024] 腫瘍学で用いられる化学療法によって誘発される中毒性膵炎は珍しいものではない。アスパラギナーゼによる中毒性膵炎はかなり文書化されており、多くの症例が文献に報告されている。PEG形態も含め、全ての形態を合わせたアスパラギナーゼによる膵炎の総発生率は、研究に応じて2%から16%まで幅がある(Knoderer HM et al., Pediatr Blood Cancer, 25 August 2006、Muller 1998, 2: 97-113、AlvarezOAet al., Med. Pediatr. Oncol. 2000, 34(3): 200-5)。この膵炎は、出血及び偽嚢胞によって併発し得るが、死亡するケースは依然として稀である。膵炎の発症は、アスパラギナーゼの投与の中断と、膵炎の処置の開始を余儀なくさせる。上記の研究を総体的に考慮すると、比較的高用量のアスパラギナーゼ(3000IU〜60,000IU/m2/dose)を反復的に投与することが素因である。] [0025] アスパラギナーゼによる処置の他の考え得る膵合併症は、糖尿病の発症であり、その発生率は、研究に応じて症例の1〜14%である。このメカニズムは、ランゲルハンス島のβ細胞によるインスリン産生量の低下と見られる。ケトーシスを伴わない高血糖及び糖尿が、最も一般的な症状である。この作用は可逆的であり、処置を中断すると消失する。プレドニゾンとの同時投与により、高血糖が増大することもあるが、その発症リスクは低くなる。] [0026] したがって、膵臓癌の治療の場合には、膵臓が損傷している患者にアスパラギナーゼを使用すると危険を伴う場合があり、これらの望ましくない作用を考慮しなければならない。] [0027] 上記(Lessner et al., 1980)のような、天然形態のアスパラギナーゼによるヒト臨床試験では、これらの懸念が完全に正しいことが示された。その一方で、ペグ化形態がヒトの膵臓癌治療での使用に適しているかは未だ示されていない。現在までに得られている成果は、インビトロ、及び膵腫瘍異種移植モデルのマウスにおけるインビボでのものに限られている。現在は、ペグ化形態の分子が一方では依然としてアレルギーを起こすものであり(Muller et al., 1998)、他方では膵臓毒性がある(Knoderer 2006; Muller 1998、Alvarez 2000)という事実を考えると、ペグ化形態が臨床での使用に適しているかの立証には程遠い。更には、上記のように、エンゾン・ファーマシューティカルズが、固形腫瘍の治療でのOncaspar(登録商標)の使用に関して実施した臨床試験は、効果が現れる前に毒性が生じたために中断されている(Cowen and Company, "Quick Take: Solide Q4 Results, But Oncaspar Solid Tumor Trial Hits A Snag", Specialty Pharmaceuticals, February 14, 2008)。] [0028] アスパラギナーゼの治療指数を向上させる目的で、アスパラギナーゼを赤血球に封入することは、開発研究の主題となっている。赤血球に封入したアスパラギナーゼの耐性研究をKravtzoffらが行った(C. Eur J Clin Pharmacol, 1996; 51(3-4): 221-5)。非ホジキンリンパ腫を主に患った患者13人に、赤血球に封入したアスパラギナーゼを注射した(30〜200IU/kg)。この研究では、アスパラギナーゼの直接注射時(27%)と対照して、アレルギー反応が見られないことが示されている。加えて、赤血球に封入したアスパラギナーゼの注射によって、アスパラギンの枯渇が連続50日間持続可能になる。] [0029] その一方で、様々な研究(国際公開第A−2006/016247号、Millan C G et al., Journal of Controlled Release, 2004, 95(l):27-49、Kravtzoff R et al., Journal of Pharmacy and Pharmacology, 1990, 42(7): 473-476)には、アスパラギナーゼの赤血球への封入と、リンパ腫と急性リンパ芽球性白血病への適用という背景における、この封入酵素の薬物動態特性の向上について記載されている。] [0030] 封入形態のアスパラギナーゼではアレルギー反応が見られないが、赤血球中に封入した状態での投与には、赤血球が最終的に破壊され、その内容物が血管内腔に流れ出すという点で、特に全身状態が悪いか、又は進行膵臓癌をもつ患者における膵臓レベルでの結果に関して、ある種の疑念が残る。同様に、臨床効果も立証されていない。] [0031] 本発明者は、膵腫瘍異種移植モデルマウスにおいて、赤血球に封入したアスパラギナーゼの効果を初めて立証した。それと同時に、本発明者は、血管内腔に遊離残留アスパラギナーゼが存在しないことを示す結果を得た。また、本発明者は、赤血球の利用とリンクした薬物動態の向上によって、遊離形態又はPEG形態で用いる場合に必要となる酵素の量に比べて、酵素の使用量をかなり少なくできるようになり、膵臓毒性リスクが更に低下することを立証した。本発明者によって得られた成果は、進行膵臓癌をもつ患者、又は過敏症患者も含め、膵臓癌の処置に封入アスパラギナーゼを使用することへの道を開く。] [0032] すなわち、本発明の第1の目的は、膵臓癌を処置するための医薬としての、アスパラギナーゼを封入した赤血球の懸濁液である。] [0033] 本発明の第2の目的は、膵臓癌の処置を意図した治療用組成物又は医薬であって、アスパラギナーゼを封入した赤血球の懸濁液を有効量含む治療用組成物又は医薬である。] [0034] 典型的には赤血球は、薬理学的に許容できる食塩水中に懸濁状態で存在する。これは、赤血球用の標準培地、具体的には、グルコース、デキストロース、アデニン、及び/又はマンニトールのような成分がおそらくは添加されたNaCl(好ましくは0.9%)の溶液であることができる。用いることができる標準培地は、アデニン、グルコース、マンニトール、及び塩化ナトリウムを基剤とする溶液であるSAGマンニトール及びADsolである。この溶液は、L−カルニチンのような保存剤を更に含むことができる。この溶液は、1種以上の他の有効成分、具体的には、後述されているような、膵臓癌の処置を意図した化学療法剤、又は、膵臓癌に付随することのある症状若しくは障害の処置を意図とした有効成分も含むことができる。] [0035] 上記の懸濁液は、使用できる状態であることができ、希釈なしでも注射又は灌流による投与に適したヘマトクリットを有することができる。] [0036] 上記の懸濁液は、注射又は灌流による投与の前に希釈する必要がある形でパッケージングすることもできる。] [0037] 本発明によれば、使用できる状態である懸濁液のヘマトクリットは、有益には約40〜約70%、好ましくは約45〜約55%、更に良好には約50%である。] [0038] 希釈する形態では、ヘマトクリットは更に高く、具体的には約60〜約90%であることができる。] [0039] 上記の溶液は、約10〜約250mlの体積でパッケージングするのが好ましい。パッケージングは、輸血に適したタイプの血液バッグに行うのが好ましい。処方箋に対応する封入アスパラギナーゼの全量を血液バッグに入れるのが好ましい。] [0040] 封入アスパラギナーゼの量は、具体的には、赤血球の懸濁液1ml当たり約30〜約300IUであることができる。この量は、1ml当たり約70〜約150IUであるのが好ましい。] [0041] 本発明の更なる目的は、膵臓癌の処置を意図とした医薬の調製のために、アスパラギナーゼを封入した赤血球、又はこの赤血球の懸濁液を使用することである。このような使用の際には、上記の懸濁液、及び治療用組成物又は医薬に関して示した特徴を考慮に入れる。] [0042] 本発明は、膵臓癌の進行ステージ、膵臓癌の組織学的形態、膵炎(重症度は様々である)の発症の可能性に拘らず、膵臓癌患者の処置に関する。] [0043] 本発明は具体的には、 −一次性の膵腫瘍をもつ患者の処置と、 −局所性アデノパシーの患者(感染した局所リンパ神経節の有無は問わない)の処置と、 −遠隔転移をきたした膵臓癌をもつ患者の処置と、 −膵頭部癌をもつ患者の処置と、 −導管腺癌を伴う膵臓癌をもつ患者の処置と、 −ムチン性嚢胞腺癌を伴う膵臓癌をもつ患者の処置と、 −ムチン性腺管内癌を伴う膵臓癌をもつ患者の処置と、 −腺房腺癌を伴う膵臓癌をもつ患者の処置と、 −嚢胞性腫瘍と、場合により嚢胞腺癌とを伴う膵臓癌をもつ患者の処置と、 −膵臓の排出管の腫瘍を伴う膵臓癌をもつ患者の処置と、 −膵臓内分泌部の癌をもつ患者の処置と、 −膵臓の部分切除又は全切除後の患者の処置と、 に関する。] [0044] 更なる実施形態では、本発明は、患者の生存期間の改善に関する。] [0045] 本発明の更なる目的は、膵臓癌の処置方法であり、この方法では、本発明による、アスパラギナーゼを封入した赤血球の懸濁液、又は、治療用組成物若しくは医薬を有効量、それを必要とする患者に投与する。] [0046] この方法は、上述のように、様々な形態の疾患に適用することができる。] [0047] 投与は、静脈内注射又は動脈内注射によって、好ましくは血液バッグ等からの灌流によって行う。投与は典型的には、腕の静脈内に行うか、又は中心静脈カテーテルを介して行う。] [0048] 具体的には、本発明による、約10〜約250mlの懸濁液(1回量)、治療用組成物、又は医薬を投与する。20mlを超える場合には、灌流の使用が好ましい。] [0049] 封入アスパラギナーゼの量は具体的には、赤血球懸濁液1ml当たり約30〜約300IUであることができる。この量は、1ml当たり約70〜約150IUであるのが好ましい。] [0050] 処置は、決定したプロトコールに従って、1回量又は数回分の量を投与することを含む。この処置では、推奨される処置継続時間にわたり、月に1度、2週間に1度、又は1週間に一度の間隔で、数回の投与を行うことができる。] [0051] この処置は、毎回(1回量服用のたびに)、体重1kg当たり20〜500IU当量のアスパラギナーゼを投与することに存することができる。1回量当たり50〜150IU/kgを投与するのが好ましい。] [0052] 本発明は、膵臓癌の処置用に、アスパラギナーゼを封入した赤血球と標準的な化学療法製品とを組み合わせたものも提供する。つまり、この組み合わせは、ゲムシタビン、シスプラチン、オキサリプラチン、又は、白金誘導体、例えばシスプラチン若しくはオキサリプラチンと組み合わせた5−フルオロウラシルによってもたらすことができる。第1の形態では、本発明による懸濁液、治療用組成物、又は医薬内でこの組み合わせをもたらす。第2の形態によれば、この組み合わせは、同一の患者に別々に、同時に、又は時間差を設けて投与することによる組み合わせである。] [0053] アスパラギナーゼ自体には、9015−68−3というCAS番号が割り当てられている。その慣用名はアスパラギナーゼであり、その他の一般名はコラスパーゼ、L−アスパラギナーゼ、及びL−アスパラギンアミノヒドロラーゼである。] [0054] 本発明の意味におけるアスパラギナーゼという用語は、あらゆる起源のアスパラギナーゼも網羅し、具体的には、天然若しくは組み換え体由来のもの、並びに、例えばPEG形態のように、アスパラギナーゼを組み込んだあらゆる誘導体、又は、L−アスパラギナーゼの活性を保持するフラグメントであることができる。また、あらゆる細菌に由来するアスパラギナーゼも網羅する。つまり、アスパラギナーゼは、大腸菌型のもの、具体的には大腸菌HAP−A−1−3、エルビニア・クリサンセミ(Erwinia chrysanthemi)型のもの、又はウォリネラ・スシノゲネス(Wolinella succinogenes)型のものであってよい。「型」とは、当該細菌の培養液から得ることができること、又は、組み換え体、換言すると、遺伝子工学によって得られる当該細菌のアスパラギナーゼの形態であることができることを意味するものとして理解する。好ましい実施形態では、アスパラギナーゼは大腸菌HAP−A−1−3型である。] [0055] アスパラギナーゼという用語は、本発明の意味においては、L−アスパラギンアミノヒドロラーゼ活性を有する細菌酵素であるアスパラギナーゼ様物質も網羅する。例としては、アシネトバクター・グルタミナーゼ・アスパラギナーゼ(Acinetobacter glutaminase asparaginase)(AGA)を挙げてよい。] [0056] 有効成分の赤血球への封入を可能にする技法は既知であり、本発明において好ましい溶解・再封による基本的な技法は、欧州特許第A−101 341号、及び欧州特許第A−679 101号に記載されており、当業者であれば、これらの特許を参照することができるであろう。この技法によれば、透析ユニット(例えば透析バッグ、又は透析カートリッジ)の第1の区画には、赤血球の懸濁液が連続的に供給され、第2の区画は、赤血球を溶解する目的で、赤血球の懸濁液に比べて低張の水溶液を含む。続いて、再封ユニットにおいて、浸透圧及び/又はコロイド浸透圧を上昇させることによって、アスパラギナーゼの存在下で赤血球の再封を誘導してから、アスパラギナーゼを含む赤血球の懸濁液を回収する。] [0057] 現時点で示されている変形形態の中でも、国際公開第A−2006/016247号に記載されている、効率的で再現可能、かつ信頼性があり安定した形でアスパラギナーゼを封入可能にする方法が好ましい。この方法は以下の段階を含む。 1−65%以上のヘマトクリットレベルで、等張溶液中に赤血球ペレットを懸濁させ、+1〜8℃で冷却する段階 2−この同じ赤血球ペレットから採った赤血球サンプルを用いて浸透圧脆弱性を測定する段階。段階1及び2はいずれの順番でも行うことができる(並行して行うことも含む) 3−同じ容器内で、常に+1〜+8℃に保たれた温度にて、アスパラギナーゼを溶解及びインターナリゼーションする手順であって、65%以上のヘマトクリットレベルの赤血球の懸濁液と、+1〜+8℃まで冷却した低張性溶解用溶液とを透析カートリッジに通すことと、先ほど測定した浸透圧脆弱性に基づき、溶解パラメーターを調節することとを含む手順 4−内部の温度が+30〜+40℃である第2の容器内で、高張溶液の存在下で行われる再封手順] [0058] 「インターナリゼーション」とは、赤血球の内部にアスパラギナーゼを浸透させることを意味するものと理解する。] [0059] 具体的には、透析のために、65%以上、好ましくは70%以上の高いヘマトクリットレベルで、赤血球ペレットを等張溶液中に懸濁させ、この懸濁液を+1〜+8℃、好ましくは+2〜+6℃、典型的には+4℃前後まで冷却する。ある特定の態様によれば、ヘマトクリットレベルは65〜80%、好ましくは70〜80%である。] [0060] 浸透圧脆弱性は、溶解段階の直前に、懸濁液中にアスパラギナーゼが存在しているか、又は存在していない状態で、赤血球に関して測定するのが有益である。赤血球、又は赤血球を含む縣濁液は、溶解用に選択した温度に近いか、又はこれと同じ温度であるのが有益である。本発明の別の有益な特徴によれば、実施した浸透圧脆弱性測定の値を即座に利用する。換言すれば、サンプル採取の直後に、溶解手順を行う。サンプル採取と溶解開始との間の時間間隔は30分以内、更に良好には25分以内、更には20分であるのが好ましい。] [0061] 溶解・再封手順を行う方法と、浸透圧脆弱性の測定及び割当に関する更なる詳細については、当業者であれば、国際公開第A−2006/016274号を参照することができるであろう。] [0062] 以下では、非限定的な例として解釈される実施形態によって、本発明について更に詳細に説明していく。] 図面の簡単な説明 [0063] 図1は、アスパラギナーゼ又は封入アスパラギナーゼの半減期の計算方法をしているグラフである。 図2は、アスパラギナーゼ又は封入アスパラギナーゼの半減期の計算方法を示しているグラフである。 図3は、各種のプロトコールに従って処置したマウスにおける、時間の関数としての腫瘍成長阻害性を示しているグラフである。 図4は、異種移植モデルの各マウスグループの時間に対する相対腫瘍体積を示している。 図5は、異種移植モデルの各処置マウスグループのマウス生存率を表しているグラフである。] 図1 図2 図3 図4 図5 [0064] 実施例1:L−アスパラギナーゼをマウス赤血球に封入する方法 透析バッグ内での低張透析法によって、L−アスパラギナーゼ(Kidrolase(登録商標)、フランス、リモネストのOPI−ユーサ)をマウス赤血球(OF1マウス)に封入する。血液を前もって遠心分離して血漿を除去してから、0.9%NaClで3回洗浄する。透析開始の前に、アスパラギナーゼの存在下でヘマトクリットを70%に調節し、赤血球(RBC)の最終濃度が400IU/mlになるように加える。低オスモル濃度の透析バッファーに対して、透析を4℃にて50分続ける。続いて、高オスモル濃度溶液を添加すると共に、30分間37℃でインキュベートすることを通じて、マウス赤血球を再封する。0.9%NaClで2回、ウシ血清アルブミンBSA(6%)を添加したSag−マンニトールで1回洗浄した後、赤血球をヘマトクリット50%に調節する。L−アスパラギナーゼを封入したこの赤血球は、L−Aspa RBCと称する。この封入によって、RC1ml当たり40IUのアスパラギナーゼという濃度、ヘマトクリット50%のL−Aspa RBCが生成される。] [0065] 封入手順中、血液全体、洗浄したRBC、L−アスパラギナーゼと混合したRBC(透析前)、及びL−アスパラギナーゼを挿入したRBC(透析後)の以下の項目について試験した。 −ヘマトクリット(Ht) −平均血球体積(ACV) −平均血球ヘモグロビン濃度(ACHC) −総ヘモグロビン濃度 −細胞計数] [0066] L−アスパラギナーゼ酵素活性の測定のために、低張透析の前後に細胞懸濁液のアリコートを回収する。L−アスパラギナーゼの評価は、Orsonneau et al., “Dosage automatique en cinetique de l'activite L-Asparaginase plasmatique en suivi therapeutique des leucemies aigues lymphoblastiques”, Ann Biol Clin, 62: 568-572に公開されているプロトコールに従って行った。] [0067] 実施例2:マウスL−AspaRBCの薬物動態学的パラメーターと薬物力学的パラメーターの測定 マウスの循環血液中のL−Aspa RBCの半減期を測定する目的、及び、マウスの血漿中のL−アスパラギンの枯渇を立証する目的で、マウスL−Aspa RBCをOF1マウスに注射した。200IU/kgを1回、各マウスに静脈内注射した。] [0068] L−AspaRBCの半減期は12.39±0.74日である(酵素の活性に基づいて計算)。細胞標識(CFSE−L−Aspa RBC)を介して、マウスL−Aspa RBCの半減期を計算すると、その値は16.52±3.13日であり、CFDA−SEで標識したRBCのみでは、15.83±3.31日である。] [0069] 血漿中のL−アスパラギンは全面的に枯渇し(<2μM)、この枯渇は、L−AspaRBCの注射から15分後に実現し、少なくとも20日間持続する。] [0070] 表1:L−AspaRBC、及びCFDA−SEで標識したマウスRBC(CFSE RBC)について得られた薬物動態学的データ] [0071] ] [0072] 半減期は以下のように計算した。 プロット方程式から得られた切片を2で割る。続いて、プロットによって、横座標の対応する値を計算する。 この計算の例は図1に示されており、図中、切片の計算値は2.8461である。 切片を2で割った値は1.42である。 横座標の対応する値の計算法:1.42=(−0.1145×X)+2.8 X=(1.42−2.8)/−0.1145=−1.38/−0.1145=12日] 図1 [0073] より実数に近い半減期は、第2の方法で計算することができ、この方法では、図2に示されているように、縦座標の目盛は対数目盛であり、横座標の目盛りは均等目盛である。 半減期は以下のように計算する。 Ln(2)/曲線のプロット係数 図2の例(図1と同じ例である)では、半減期は以下のとおりである。 Ln(2)/0.083=8.3日] 図1 図2 [0074] 表2:L−AspaRBCと遊離L−アスパラギナーゼの、時間の関数としての残存L−アスパラギナーゼ活性の測定] [0075] ] [0076] 更には、循環血漿のL−アスパラギナーゼの評価によって、マウスにL−AspaRBCを注射してから24時間を過ぎると、得られる値がアッセイ検出限度(1〜3IU/リットル)になることが示されている。] [0077] 実施例3:L−AspaRBCのマウスへの注射によるヒト膵腫瘍成長阻害性 この実験の目的は、ヒト膵腫瘍をもつマウスにL−Aspa RBCを注射して、腫瘍成長阻害性を観察することである。インビトロにおいてL−アスパラギナーゼに対して感受性があり、かつL−アスパラギンシンターゼが欠損した細胞株、すなわちMia Paca−2を選択した。] [0078] L−AspaRBCを注射後の腫瘍成長阻害性を調べるために、12匹のマウスからなるグループ4つと共に、インビトロプロトコールを定めた。このプロトコールには、膵臓癌向けの対照処置(ゲムシタビン)が含まれている。] [0079] 試験物質とコントロールの調製 試験物質1:マウス赤血球中に組み込んだL−アスパラギナーゼ(L−AspaRBCと称する)。L−Aspa RBCの調製手順は上述されている(実施例1参照)。] [0080] 試験物質2:ゲムシタビン] [0081] コントロール物質2:PBS(ゲムシタビン取り込みバッファー)] [0082] Mia Paca−2細胞の培養 無胸腺ヌードマウス/ヌードマウス48匹に皮下注射する目的で、指数増殖期のヒト膵腫瘍細胞(Mia Paca−2)(供給源:ATCC(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション)をトリプシン消化してから、計数、洗浄した後、最後に無血清DMEM培地中に再懸濁させた。] [0083] 動物 5〜6週齢、体重18〜22gの無胸腺ヌードマウス/ヌード(BALB/cヌード)マウス48匹をハーラン(フランス)から入手した。処置の前に、これらの動物を特殊なSPF(特定病原体未感染)ユニット内に7日間置いた。] [0084] これら48匹のマウスをランダムに、12匹からなる4つのグループに分けた。] [0085] 腫瘍体積が200mm3に達したら、以下のようにマウスに注射した。 −L−AspaRBC(200IU/kg)を1回、10ml/kg未満の体積で静脈内注射 −ゲムシタビン(60mg/kg)を4回、静脈内注射] [0086] 処置計画 処置計画は以下のように定めた。 −グループ1:マウスにPBSを投与した。 −グループ2:マウスにゲムシタビン(60mg/kg)を4回注射した(1週間に2回の割合で2週間にわたって注射)。 −グループ3:マウスにL−AspaRBCを1回注射すると共に、ゲムシタビン(60mg/kg)を4回注射した(1週間に2回の割合で2週間にわたって注射)。 −グループ4:マウスにL−Aspa RBCを1回注射した。] [0087] このそれぞれ異なる製品の注射は盲検で行った。] [0088] 57日間にわたり腫瘍の測定を定期的に(3〜4日おきに)行った。] [0089] 結果 図3は、時間の関数として、それぞれに異なるグループの腫瘍成長阻害性を示しているグラフである。] 図3 [0090] コントロールグループ1では、0mm3から1058±939mm3までの規則的な腫瘍成長、コントロールグループ2では、0mm3から1353±1016mm3までの規則的な腫瘍成長を示している。グループ2(ゲムシタビン)では、マウス内の膵腫瘍の成長に対する医薬の作用は示されていない(腫瘍体積196±57mm3で注射。57日目時点で1353±1016mm3)。これに対して、ゲムシタビンと併せてL−AspaRBCを注射したケースでは、腫瘍の成長がかなり遅延した。この処置は、腫瘍が190±43mm3であったときに注射した。また、57日後の腫瘍体積は、ゲムシタビンのみで処置したグループ2のマウスの1353±1016mm3に対して、494±719mm3である。最後に、L−Aspa RBC(グループ4)は、腫瘍体積193±46mm3で注射後、57日目には285±225mm3にしか到達していないので、ゲムシタビンと併用する場合よりも更に、腫瘍成長阻害に有効である。] [0091] L−アスパラギナーゼを封入したマウス赤血球(L−AspaRBC)が、マウスに移植したヒト膵腫瘍の成長を遅延させるのに最も効果的な処置剤であった。驚くべきことに、L−Aspa RBC単独の方が、ゲムシタビンと併用するよりも、腫瘍成長阻害に有効である。] [0092] 実施例4:膵腫瘍PANC−1をもつマウスにおける、赤血球に封入したL−アスパラギナーゼのインビボでの抗腫瘍性調査] [0093] この調査の目的は、赤血球に封入したL−アスパラギナーゼ(L−aspaRBC)をヒト膵腫瘍(PNC−1)異種移植モデルに投与したものの抗腫瘍作用をアセスメントすることであった。] [0094] PANC−1は、L−アスパラギナーゼに対してインビトロ感受性のあるヒト膵臓細胞株である。この調査では、15匹のマウスからなる4つのグループに、赤血球に封入したL−アスパラギナーゼ、ゲムシタビン(膵癌の対照処置)、これら2つの薬剤の組み合わせ、又はコントロールアイテムのいずれかを接種した。10匹のマウスからなる最後のグループには、何も処置をせず、コントロールグループとして使用した。] [0095] 試験アイテムとコントロールアイテムの調製] [0096] 試験アイテム1:マウス赤血球中に封入したL−アスパラギナーゼ(L−aspaRBC)。L−aspa RBCの製造手順は、実施例1に記載のとおりに行った。 試験アイテム2:ゲムシタビン(Gemzar(登録商標)、イーライ・リリー・アンド・カンパニー) コントロールアイテム:PBS(食塩水)] [0097] Panc−1細胞株の培養] [0098] ヒト膵腫瘍細胞PANC−1(英国のECCACから入手)の対数増殖培養液をサブクローニングし、その増殖能とアスパラギナーゼに対する感受性に基づき、クローン番号6sCを選択した。 100匹のnu/nuマウスに皮下注射するために、クローン番号6sCをトリプシン処理、計数、洗浄し、無血清DMEM培地中に再懸濁させた。] [0099] 動物] [0100] 5週齢、体重20g+/−3gの無胸腺ヌードマウス100匹をハーラン・フランスから入手した。この動物を12日間環境順化させ、SPF(特定病原体未感染)条件、並びに、連続制御した温度条件、湿度条件、光周期条件、及び換気条件に置いた。] [0101] 細胞移植から4日後、腫瘍体積を測定し、サイズに従ってランク付けし、中央値を計算した。腫瘍体積が中央値よりも大きい35匹のマウスと、腫瘍体積が中央値よりも小さい35匹のマウスを調査に含めた(合わせて70匹のマウス)。] [0102] 事前に設定したランダム化表に従って、これらの動物をランダムに、15匹のマウスからなる4つのグループと、10匹のマウスからなる1グループとに割り当てた。マウスに以下のように接種した。 −L−aspaRBC(200IU/kg)を1回、静脈内注射した。投与量は8ml/kg以下、又は動物の血液量の10分の1以下であった。 −ゲムシタビン(80mg/kg)を4回、静脈内注射した。 −PBSを4回、静脈内注射した。] [0103] 処置スケジュール グループ1:マウスにPBSを4回、3日おきに注射した。 グループ2:マウスにゲムシタビンを4回、3日おきに注射した。 グループ3:マウスにL−aspaRBCを1回注射すると共に、ゲムシタビンを4回、3日おきに注射した。 グループ4:マウスにL−aspa RBCを1回注射した。 グループ5:無処置 43日間、腫瘍の測定値を1週間に3回(月曜、水曜、及び金曜)記録した。] [0104] 結果] [0105] 図4は、各グループの、時間に対する相対腫瘍体積を示している。相対腫瘍体積は、特定の日の腫瘍体積を処置前の腫瘍体積で除することによって計算し、注射日のグループ間における腫瘍体積の統計的差異による偏りを防ぐ。] 図4 [0106] 図4は、ゲムシタビンのグループと、ゲムシタビンとL−aspaRBCとを組み合わせたグループの相対腫瘍体積が、PBSのグループよりもゆっくり増大したことを示している(43日目において、ゲムシタビンのグループは51.8±17.1、ゲムシタビンとL−aspa RBCとを組み合わせたグループは46.3±29.7、PBSのグループは75.1±31.0)。併用処置の方が、ゲムシタビン単独よりも腫瘍成長阻害に有効である傾向があることに注目すべきである。] 図4 [0107] この図では、L−aspaRBCの単回注射の方が、コントロールグループよりも相対腫瘍体積がゆっくり増大することが明らかなったので(43日目において、49.3±32.2と75.1±31.0)、L−aspa RBCの単回注射の効果を浮き彫りにしている。] [0108] 図5は、各処置グループのマウスの生存率をグラフで示したものである。L−aspaRBC又はゲムシタビン単独で処置したものは、PBSよりも優れていた訳ではなく、グラフはほぼ、全体的に似通っている(43日目において、ゲムシタビンのグループでは20%のマウスしか残らず、L−aspa RBCのグループでは33%のマウス、PBSのグループでは13%のマウスが残った)。グループ間の差異は、統計的には有意ではなかった。しかし、マウスの生存率は、ゲムシタビンをL−aspa RBCと組み合わせたことによって大きく上昇し(43日目において60%のマウスが依然として生存していた)、その差異は有意であることが明らかになった(p<0.01)。更には、L−aspa RBCと組み合わせたゲムシタビンでは、ゲムシタビン単独の場合に比べて、マウスの生存率が統計的に有意な上昇を見せた(p<0.05)。] 図5 [0109] これらの結果によって、ヒト膵臓細胞株をもつマウスにおいては、L−aspaRBCを1回静脈内注射すると、腫瘍の成長が阻害されること、及び、L−aspa RBCの存在によって、ゲムシタビン処置が強化されることが示されている。この所説は、他のグループよりも高い腫瘍成長阻害性が観察されたことと、調査の最後に生存していた動物の割合によって裏付けられている。]
权利要求:
請求項1 膵臓癌を処置するための医薬としての、アスパラギナーゼを封入した赤血球の懸濁液。 請求項2 膵臓癌の処置を意図した治療用組成物又は医薬であって、アスパラギナーゼを封入した赤血球の懸濁液を含む治療用組成物又は医薬。 請求項3 患者の生存期間を改善するための、請求項1又は2に記載の懸濁液、組成物、又は医薬。 請求項4 使用できる状態である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の懸濁液、組成物、又は医薬。 請求項5 使用する前に希釈する、請求項1又は2に記載の懸濁液、組成物、又は医薬。 請求項6 希釈前のヘマトクリットが60〜90%である、請求項5に記載の懸濁液、組成物、又は医薬。 請求項7 使用できる状態である前記懸濁液のヘマトクリットが約40〜約70%、好ましくは約45〜約55%、更に良好には約50%である、請求項3、4、5、又は6に記載の懸濁液、組成物、又は医薬。 請求項8 アスパラギナーゼを1ml当たり30〜300IU、好ましくは1ml当たり70〜150IU含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の懸濁液、組成物、又は医薬。 請求項9 化学療法剤を更に含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の懸濁液、組成物、又は医薬。 請求項10 前記化学療法剤として、ゲムシタビン、シスプラチン、オキサリプラチン、又は、白金誘導体、例えばシスプラチン若しくはオキサリプラチンと組み合わせた5−フルオロウラシルを含む、請求項9に記載の懸濁液、組成物、又は医薬。 請求項11 膵臓癌の処置を意図した医薬の調製のための、アスパラギナーゼを封入した赤血球の使用。 請求項12 患者の生存期間の改善を意図した医薬の調製のための、アスパラギナーゼを封入した赤血球の使用。 請求項13 アスパラギナーゼを1ml当たり30〜300IU、好ましくは1ml当たり70〜150IU含む医薬の調製を目的とする、請求項11又は12に記載の使用。 請求項14 10〜250mlの懸濁液の形態である医薬の調製を目的とする、請求項11、12、又は13に記載の使用。 請求項15 アスパラギナーゼを体重1kg当たり、かつ1回量当たり20〜500IU、好ましくは50〜500IU投与することを意図した医薬の調製を目的とする、請求項11、12、13、又は14に記載の使用。 請求項16 患者の生存期間を改善するための方法であって、アスパラギナーゼを封入した赤血球の懸濁液を含む組成物又は医薬を該患者に投与する方法。
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引用文献:
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